「農地」かどうかは、登記簿上の地目(田、畑)で判断するわけではありません。
農地法では、「耕作の目的に供される土地」を「農地」としています。
〇「耕作」とは何か
耕作とは、「土地に労費を加え肥培管理を行った作物を栽培すること」で、土地に
して、手間暇やお金をかけて、肥料をあげたり、草刈りなどの管理をして、作物を栽
培することです。
〇「耕作の目的に供される土地とは」
現在耕作している土地のほかに、現在耕作していなくても、耕作しようとすればい
つでも耕作できる土地で、休耕地や不耕地も含みます。
〇ポイント
「農地」とは、登記簿上で判断しない。
①実際に肥料や草刈りなどの耕作を行って作物を栽培している土地
②現状では耕作していないが、いつでも耕作ができる土地
●市街化区域の農地について
市街化区域の農地で農地の転用を行う場合は、農業委員会に対して届出を行えばよく、許可の必要はありません。
一般的に届出は、役所に届出書が到達したときに、履行されることになりますが、市街化区域内の農地転用に関する届出は、農業委員会が届出に対する受理・不受理処分をすることから、申請に近いものと考えることができます。
不受理とする場合は以下の3点です。
①届出にかかる農地が市街化区域内にない場合
②届出者が届出にかかる農地の権限を有していない場合
③届出書に添付すべき書類が添付されていない場合
農地法第5条における転用の届出も、許可申請と同様に、農地の所有者と農地の譲受人の双方が共同で届出を出します。
また、届出の効力は適法な届出を農業委員会の窓口に提出した日に発生します。
(届出が受理された日ではありません。)
●市街化区域と市街化調整区域について
市街化区域と市街化調整区域は都市計画法という法律に基づいています。
都市計画法は、都市の健全な発展と秩序ある整備を図ることを目的としていて、無秩
序・無計画な都市計画が行われないようにしています。
市街化区域は、すでに市街地を形成している区域、及びおおむね10年以内に優先的
かつ計画的に市街化を図る区域を指します(市街化を促進する区域です)。
市街化調整区域は、優れた自然環境や農地を守るために開発行為を原則として行わず、都市施設の整備も原則として行われない区域を指します。(市街化を抑制すべき区
域)市街化区域と市街化調整区域に分けることを「線引き」と呼びます。市町村によっては都市計画を想定せず、線引きがされていない「非線引き都市計画区域」というところもあります。この場合、すべての農地は農地法上の許可の対象になります。
自治体によっては、線引きされていなくても、市街化が進んでいる地域は、許可の基
準を緩めているところもあります。
農地が「市街化区域」や「市街化調整区域」にあたるかを調べるためには、市町村が
WEB上で公開している都市計画図等を用いることができます。
あるいは、直接、市町村の都市計画を担当している部署に問い合わせる方法をとりま
す。自治体によっては、固定資産税評価証明書に「市街化区域」「市街化調整区域」の旨を記載しているところもあります。
●農地転用許可制度のしくみ
農地の転用・・・農地を人為的に農地以外にする行為を言います。
例えば、宅地、店舗を建設したり、駐車場にしたり、資材置き場にすることなどです。
土地の所有者である農家からすれば、自分の土地を自由に使うためになぜ許可が必要
なのかと思うかもしれません。しかし、許可を得ないで農地を農地以外のものにす
ると、「違反転用」になります。
一方、農地法第5条の転用は、農地を農地以外のものにする行為が規制対象で、かつ
転用に際し、新たに権利の設定または移転を伴います。
農地法第4条・・・・・農地を農地以外のものにする場合
農地法第5条・・・・・農地を農地以外のものにする場合+権利設定(移転)
●農地転用の許可をする権限について
農地転用の許可をする権限は、原則として、都道府県知事にありますが、指定市町村
の区域にあっては、指定市町村にも権限があります。
また、4ヘクタールを超える農地については、農林水産大臣に権限があります。
地方自治法により、農地転用許可事務は各市町村長(各市町村の農業委員会)に移譲
されているので、各市町村の農業委員会を経由して、都道府県知事の許可を得ること
になります。(よって、窓口は各市町村の農業委員会事務局です。)
●転用許可基準について
農地を転用するための理由がやむを得ないものであるかどうかが様々な角度から検討
されます。農地転用が許可されるためには、大きく分けて「立地基準」と「一般基
準」を満たす必要があります。以下に「立地基準」と「一般基準」について紹介します。その他に、農業振興地域についても紹介します。
●立地基準について
立地基準等は、農地の営農条件と周辺の土地の市街化の状況によって、農地を区分け
し、その区分けに従って許可・不許可の判断が下されます。
つまり、対象の農地がどのような区分にあるかによって、農地転用が可能であるのか
が変わってきます。
●農用地区域内農地
農振法(農業振興地域の整備に関する法律)に基づいて、市町村が定めた農業振興地
域整備計画において、農用地区域とされる区域内に存在する農地のこと(「青地」と
呼ばれる)原則、転用は認められません。
ただし、転用予定地にある特に営農条件を備えている農地で、下記の2つの要件を満
たした農地のこと。
①10ヘクタール以上の規模のまとまった農地で、高性能農業機械による営農に適す
ると認められる農地
②特定土地改良事業等の施工区域にあり、その事業の完了年度の翌年度から起算して
8年が経過していない農地
この農地も原則転用は認められません。
●第一種農地
集団的に存在し、良好な営農条件を備えていて、下記の3つの要件を満たしている
農地のこと。
①おおむね10ヘクタール以上の規模のまとまった区域内にある農地
②特定土地改良事業等の施工区域にある農地
③傾斜、土壌の性質その他の自然的要件からみて、周囲の標準的な農地を超える生
産性をあげることができるとみとめられる農地
この場合も原則転用は認められません。
●第二種農地
第三種農地のうち近接する区域その他市街化が見込まれる区域内にある農地又は②農
用地区域内にある農地以外であって、甲種農地、第一種農地、第三種農地以外の農地
のこと。
上記①については、次の3点が要件です。
①街路が普遍的に配置されている地域の農地
②市街化の傾向が著しい区域に近接する区域内の農地で、その規模がおおむね10ヘ
クタール未満である農地
③駅、市町村役場等の公共施設から近距離(500以内)にある地域内の農地
上記②の具体的な事例としては、中山間地域に存在する農業公共投資の対象となって
いない小集団農地などです。
この農地は、申請農地以外農地では、転用目的を達成できないと認められる場合には
許可が認められます。
●第三種農地
市街地の区域内または市街化傾向の著しい区域内にある農地のこと。
具体的には、下記のような農地のことを指します。
・水管、下水管、ガス管のうち2つ以上が埋設された道路の沿道の区域であって、おお
むね500m以内に2つの教育施設、医療施設等の公共施設があるもの
・駅、市町村役場等の公共施設から至近距離(300m以内)にある地域内の農地
・住宅の用、もしくは事業用の用に供する施設又は公共施設もしくは公共施設が連たん
していること
・街区の面積に占める宅地の面積が40%を超えること
・都市計画法上の幼稚地域が定められている区域内農地
・土地区画整理事業の施工にかかる区域
・この農地は原則、施工が認められます。
●立地基準のまとめ
区分 | 転用の許可・不許可 | 転用の難易度 |
農用地区域内農地 | 原則、不可 | 極めて難しい |
甲種農地 | 原則、不可 | 難しい |
第三種農地 | 原則、不可 | 易しい |
●一般基準について
一般基準とは、農地の区分に関係なく適用される基準で、土地の効率的な利用の確保
という観点から許可・不許可の判断が下されます。
転用事業の用途に供する確実性(農地を転用して申請にかかる用途に供することが確
実と認められない場合には不許可)不許可となる具体例として、下記が挙げられます。
・必要な資力・信用があると認められない場合
・転用行為の妨げとなる権利を有する者の同意を得ていない場合(賃借人が該当し、抵
当権は該当しない)
・許可後、遅滞なく申請にかかる用途に供する見込みがない場合
・申請にかかる農地と一体になって、事業の目的に供する土地を利用できる見込みがな
い場合
・転用面積が申請にかかる事業の目的からみて適正と認められない場合
・他法令にかかる許認可等の見込みが認められない場合
・土地の造成(その処分)のみを目的とする場合(例外規定あり)
●周辺の農地の営農条件に対する影響
(周辺の農地の営農条件に支障が生じるおそれがあると認められる場合には不許可)不許可になる具体例として、下記が挙げられます。
・申請にかかる農地の転用行為により、土砂の流失または崩壊その他の災害を発生させ
るおそれがあると認められる場合
・集団的に存在する農地を端から次第に侵したり、分断するおそれがあると認められる
場合
・日照、通風等に支障を及ぼすおそれがあると認められる場合
・農道、ため池その他の農地を保全または利用上必要な施設の機能に支障を及ぼすおそ
れがあると認められる場合
●一時転用の後に確実に農地に復元されること
仮設工作物の設置その他一時的な利用に供する農地を転用しようとする場合、その利
用に供された後にその土地が耕作目的に供されることが確実と認められない場合は不
許可
●農業振興地域について
農業振興地域(農振地域)とは、「農業振興地域の整備に関する法律」に従って農地
整備の確保のための農林水産大臣の基本方針に基づいて、都道府県知事が策定した農業振興地域整備計画基本方針をもとに、都道府県知事と協議し、農業振興地域整備計画を定めることになります。
この計画の中で、農振地域は、さらに農用地を保全していくべき土地と、それ以外に
分けられます。
農用地として保全していくべき土地は、農用地区区域内農地と呼ばれ、今後10年間
にわたって農地として利用が考慮されていて、そのため必要な予算や資材が投入され
ています。
具体的には、大型農業機械が使いやすいように土地改良工事を行ったり、若い人が農
業を行いやすいように支援することなどです。
農振地域は、農業を推奨している地域になりますが、とりわけ農用地区域内農地は農
地を強力に推奨している地域ということになります。
一方、農振地域内では、農業以外のことについては利用制限しています。
市街化調整区域内の農地は制約があるものの、建物を建てたり、資材置き場にするこ
とができたりします。
しかし、農振地域内の農用地区域内農地は、そのような転用ができません。
どうしても必要な場合、当該農地を農用地から除外してもらう手続きが必要です。
その後で、農地法における農地転用の許可を得なければなりません。このことを「農
振除外の申出」などと言います。
この申請はほとんどに自治体で、年2回しか受けておらず、回答が得られるのも半年
程度かかります。
申請のための事前相談をしてから回答を得るまでに1年くらいかかることが現状で
す。
農振除外申請は、慎重に検討してから臨む必要があります。
●転用許可申請について
農地転用の申請の手続き
農地法第4条許可については、転用を行う者が単独で申請を行います。一方。農地法
第5条許可申請については、原則として、当事者双方が共同して申請を行います。
例外として、単独で申請が認められているのが、強瀬競売や贈与などの場合です。
●30アール以下の農地を転用する場合の手続き
①申請者は、農業委員会に申請書を提出
②農業委員会は、知事・指定市町村長に意見を付して送付
③知事・指定市町村長は申請者に許可書・不許可書を交付します。
●30アールを超える農地を転用する場合の手続き(4ヘクタールを超えない)
(※4ヘクタールを超える場合は、農林水産大臣の許可が「必要になります。)
①申請者は、農業委員会に申請書を提出
②農業委員会は、都道府県農業委員会ネットワーク機構に意見聴取
③農業委員会は、都道府県農業委員会ネットワークから回答をもらう。
④農業委員会は、知事・指定市町村長に意見を付して送付
⑤知事・指定市町村長は申請者に許可書・不許可書を交付します。
30アールを超える場合は、上記②は必須
30アール以下の場合でも市町村の農業委員会は②をすることが任意でできる。
●農家住宅・分家住宅について
市街化調整区域では、都市計画法により建物を建てることは非常に難しいです。
しかし、農業者であれば、その所有する土地に居住用の建物を建築するには、開発行
為が不要です。この建築物を農家住宅と呼びます。
ただし、都市計画上の開発が不要であるだけで、農地法第4条の許可は必要です。
農家住宅の細かい要件は、自治体の条例によるため、各自治体によって様々です。
分家住宅も各自治地で要件が決められていますが、農家住宅よりも要件が細かいで
す。
下記は、当事務所のある相模原市の要件の一部です。
・本家世帯と同じ世帯または同じ世帯だった者が申請者であること。
・市街化調整区域の線引き前から土地を所有している本家から相続・贈与・使用貸借さ
れた土地であること。
・原則敷地面積は150㎡以上400㎡以下であること。
・農地の場合は、転用許可を受けられること。
・申請者世帯(本家世帯を含む)以外の権利が設定されていないこと。
・建築基準法による接道要件等を満たしていること。
・申請者世帯(本家世帯を含む)が、他に住宅や住宅を建築することが可能な土地を有
していないこと。
・社会通念に照らし、住宅を必要とする合理的な理由があること。
・申請者は、原則婚姻(婚姻が具体的であることを含む)して世帯を有しており、住宅
を建築する確実性があること。
・土地所有者は、原則申請者世帯が取得するものであること(使用貸借を含む)
・開発許可または建築許可を受けるにあたり、あらかじめ開発審査会の議を経る必要が
ある。
●利用権設定による賃貸借(農業経営基盤強化促進法)
農地を賃貸借する場合、農地法第3条に基づく賃貸借が原則ですが、実際には「利用
権設定」という方法をとりうことが多いです。
「利用権設定」とは、農業経営基盤強化促進法(以下、基盤法強化法と称する)に基
づく農地の賃貸借のことです。
農地を農地法第3条の規定によって賃貸借したい場合、農地の所有者は農地が戻らな
いという不安を抱くことになります。一方、規模拡大を希望する農業者にとっては、
農地が集積しずらいという問題もありました。
民法では、①賃借期間の上限が50年(民法では20年)、②引き渡しを受けたこと
のみで第三者に主張できる、③更新の拒絶をするためには農地法上の許可が必要、④
解約などする時にも農地法上の許可が必要、以上4点があることで、農地の所有者は
農地が戻らないのではないかという不安を抱いています。
一方、基盤強化法の目的は、「農業経営の改善を計画的に進めようとする農業者に対
する農用地に利用集積、これらの農業者の経営管理の合理化その他の農業経営基盤の
強化を促進するための措置を総合的に講ずることにより、農業の健全な発展に寄与す
ること」となっています。
つまり、やる気のある農業者に農地を集約し、地方自治体はこれに協力しなければな
らないという趣旨です。
この法律に基づいて、農地の利用権設定をすれば、農地法の許可を必要とせずに市町
村が計画した農地利用集積計画に基づいて農地を賃貸借することが可能になります。
農地法第3条許可による農地の賃貸借と基盤強化法による農地への利用権設定の違い
をみてみます。
基盤強化法による利用権設定の場合、対象となる農地は農業振興地域内の農地を賃貸
借する方法ですが、すべての農地に対して適用できるわけではありません。また、借
り手にも一定の要件があり、基準を満たしている農業者に限って利用権を設定しま
す。
農地法第3条許可による賃貸借の場合、契約書に更新に関する特約がなければ、法定
更新される規定があります。
しかし、利用権設定の場合、契約期間が満了すると自動的に利用権の効果が終了し、
農地が貸し手の元に戻ってきます。
●農地法第3条許可との相違点
以下に利用権設定の場合の貸し手、借り手双方のメリットを記載します。
●農地利用計画の要件は次のとおりです。
・計画内容・・・市町村の基本構想に適合すること。
・農用地の要件・・・すべての農地を効率的に耕作すること。
・農業従事要件・・・すべての世帯員(法人の役員)が常時従事すること。
常時従事しない者がいる場合
①地域の農業者との適切な役割分担の下に農業経営を行うこと
②法人である場合は、業務執行役員のうち1人以上の者が耕作の事業に常時従事する
こと
その他の権利関係・・・利用権を設定する土地について権利関係者すべての同意を得
ていること(共有のうちである場合は、持分1/2を超える同意があること)
●農地の転用違反に対する処分と処罰について
違反に対する行政処分は、下記の者を対象として行われます。
・違反対象者
・条件付きで許可を受けた者がその条件に違反したとき
・違反した土地について工事を請け負った者またはその下請人
・不正の手段等で許可を受けた者
違反に対する行政処分には、許可の取り消し・条件の変更・新たな条件の付加・工事
の停止・原状回復などがあります。
これらの処分をするための要件は、違反転用事案の内容、聴聞・弁明の機会の不要で
の内容の検討、当該土地の周辺における土地の利用状況、土地の現況、農地以外のも
のになった後の法律関係、当該土地を手に入れた者がその土地が不正の手段で許可を
受けた土地であることを知っていたかどうか、過去に違反転用があったかどうか、是
正勧告を受けてもこれに従わないかどうかを総合的に検討されます。
※聴聞・弁明の機会の付与とは、行政機関が行う不利益処分に先立って、処分の名宛
人に対して行う手続きの一部です。
・行政罰
違反に対する行政罰は、3年以下の懲役または300万円以下の罰金です。行政罰の
対象者は、農地の権利移転・農地転用に違反した者、不正の手段等で許可を得た者で
す。
・転用面積が申請にかかる事業の目的からみて適正と認められない場合
・他法令にかかる許認可等の見込みが認められない場合
・土地の造成(その処分)のみを目的とする場合(例外規定あり)
●周辺の農地の営農条件に対する影響
(周辺の農地の営農条件に支障が生じるおそれがあると認められる場合には不許可)不許可になる具体例として、下記が挙げられます。
・申請にかかる農地の転用行為により、土砂の流失または崩壊その他の災害を発生させ
るおそれがあると認められる場合
・集団的に存在する農地を端から次第に侵したり、分断するおそれがあると認められる
場合
・日照、通風等に支障を及ぼすおそれがあると認められる場合
・農道、ため池その他の農地を保全または利用上必要な施設の機能に支障を及ぼすおそ
れがあると認められる場合
●一時転用の後に確実に農地に復元されること
仮設工作物の設置その他一時的な利用に供する農地を転用しようとする場合、その利
用に供された後にその土地が耕作目的に供されることが確実と認められない場合は不
許可
●農業振興地域について
農業振興地域(農振地域)とは、「農業振興地域の整備に関する法律」に従って農地
整備の確保のための農林水産大臣の基本方針に基づいて、都道府県知事が策定した農業振興地域整備計画基本方針をもとに、都道府県知事と協議し、農業振興地域整備計画を定めることになります。
この計画の中で、農振地域は、さらに農用地を保全していくべき土地と、それ以外に
分けられます。
農用地として保全していくべき土地は、農用地区区域内農地と呼ばれ、今後10年間
にわたって農地として利用が考慮されていて、そのため必要な予算や資材が投入され
ています。
具体的には、大型農業機械が使いやすいように土地改良工事を行ったり、若い人が農
業を行いやすいように支援することなどです。
農振地域は、農業を推奨している地域になりますが、とりわけ農用地区域内農地は農
地を強力に推奨している地域ということになります。
一方、農振地域内では、農業以外のことについては利用制限しています。
市街化調整区域内の農地は制約があるものの、建物を建てたり、資材置き場にするこ
とができたりします。
しかし、農振地域内の農用地区域内農地は、そのような転用ができません。
どうしても必要な場合、当該農地を農用地から除外してもらう手続きが必要です。
その後で、農地法における農地転用の許可を得なければなりません。このことを「農
振除外の申出」などと言います。
この申請はほとんどに自治体で、年2回しか受けておらず、回答が得られるのも半年
程度かかります。
申請のための事前相談をしてから回答を得るまでに1年くらいかかることが現状で
す。
農振除外申請は、慎重に検討してから臨む必要があります。
●転用許可申請について
農地転用の申請の手続き
農地法第4条許可については、転用を行う者が単独で申請を行います。一方。農地法
第5条許可申請については、原則として、当事者双方が共同して申請を行います。
例外として、単独で申請が認められているのが、強瀬競売や贈与などの場合です。
●30アール以下の農地を転用する場合の手続き
①申請者は、農業委員会に申請書を提出
②農業委員会は、知事・指定市町村長に意見を付して送付
③知事・指定市町村長は申請者に許可書・不許可書を交付します。
●30アールを超える農地を転用する場合の手続き(4ヘクタールを超えない)
(※4ヘクタールを超える場合は、農林水産大臣の許可が「必要になります。)
①申請者は、農業委員会に申請書を提出
②農業委員会は、都道府県農業委員会ネットワーク機構に意見聴取
③農業委員会は、都道府県農業委員会ネットワークから回答をもらう。
④農業委員会は、知事・指定市町村長に意見を付して送付
⑤知事・指定市町村長は申請者に許可書・不許可書を交付します。
30アールを超える場合は、上記②は必須
30アール以下の場合でも市町村の農業委員会は②をすることが任意でできる。
●農家住宅・分家住宅について
市街化調整区域では、都市計画法により建物を建てることは非常に難しいです。
しかし、農業者であれば、その所有する土地に居住用の建物を建築するには、開発行
為が不要です。この建築物を農家住宅と呼びます。
ただし、都市計画上の開発が不要であるだけで、農地法第4条の許可は必要です。
農家住宅の細かい要件は、自治体の条例によるため、各自治体によって様々です。
分家住宅も各自治地で要件が決められていますが、農家住宅よりも要件が細かいで
す。
下記は、当事務所のある相模原市の要件の一部です。
・本家世帯と同じ世帯または同じ世帯だった者が申請者であること。
・市街化調整区域の線引き前から土地を所有している本家から相続・贈与・使用貸借さ
れた土地であること。
・原則敷地面積は150㎡以上400㎡以下であること。
・農地の場合は、転用許可を受けられること。
・申請者世帯(本家世帯を含む)以外の権利が設定されていないこと。
・建築基準法による接道要件等を満たしていること。
・申請者世帯(本家世帯を含む)が、他に住宅や住宅を建築することが可能な土地を有
していないこと。
・社会通念に照らし、住宅を必要とする合理的な理由があること。
・申請者は、原則婚姻(婚姻が具体的であることを含む)して世帯を有しており、住宅
を建築する確実性があること。
・土地所有者は、原則申請者世帯が取得するものであること(使用貸借を含む)
・開発許可または建築許可を受けるにあたり、あらかじめ開発審査会の議を経る必要が
ある。
●利用権設定による賃貸借(農業経営基盤強化促進法)
農地を賃貸借する場合、農地法第3条に基づく賃貸借が原則ですが、実際には「利用
権設定」という方法をとりうことが多いです。
「利用権設定」とは、農業経営基盤強化促進法(以下、基盤法強化法と称する)に基
づく農地の賃貸借のことです。
農地を農地法第3条の規定によって賃貸借したい場合、農地の所有者は農地が戻らな
いという不安を抱くことになります。一方、規模拡大を希望する農業者にとっては、
農地が集積しずらいという問題もありました。
民法では、①賃借期間の上限が50年(民法では20年)、②引き渡しを受けたこと
のみで第三者に主張できる、③更新の拒絶をするためには農地法上の許可が必要、④
解約などする時にも農地法上の許可が必要、以上4点があることで、農地の所有者は
農地が戻らないのではないかという不安を抱いています。
一方、基盤強化法の目的は、「農業経営の改善を計画的に進めようとする農業者に対
する農用地に利用集積、これらの農業者の経営管理の合理化その他の農業経営基盤の
強化を促進するための措置を総合的に講ずることにより、農業の健全な発展に寄与す
ること」となっています。
つまり、やる気のある農業者に農地を集約し、地方自治体はこれに協力しなければな
らないという趣旨です。
この法律に基づいて、農地の利用権設定をすれば、農地法の許可を必要とせずに市町
村が計画した農地利用集積計画に基づいて農地を賃貸借することが可能になります。
農地法第3条許可による農地の賃貸借と基盤強化法による農地への利用権設定の違い
をみてみます。
基盤強化法による利用権設定の場合、対象となる農地は農業振興地域内の農地を賃貸
借する方法ですが、すべての農地に対して適用できるわけではありません。また、借
り手にも一定の要件があり、基準を満たしている農業者に限って利用権を設定しま
す。
農地法第3条許可による賃貸借の場合、契約書に更新に関する特約がなければ、法定
更新される規定があります。
しかし、利用権設定の場合、契約期間が満了すると自動的に利用権の効果が終了し、
農地が貸し手の元に戻ってきます。
●農地法第3条許可との相違点
項目 | 農地法第3条 | 利用権設定 |
対象農地 | 全ての農地 | 農業振興地域内の農用地 |
対象者 | 農地法第3条の許可要件を満たした者 | 市町村の基本構想に基づいた農地利用集積計画の要件を満たした者 |
賃貸借期間満了後の措置 | 更新拒絶には、都道府県知事の許可が必要 | 期間満了と同時に賃貸借終了 |
貸し手のメリット | ①農地法の許可が不要 ②貸した農地は、期限が来れば離作料を支払うことなく返却される。(ただし、期間を過ぎても引き続き借り手が耕作を続け、借り手も黙認していた場合、通常の賃貸借をしたものと扱われ、農地法第20条の許可がなければ終了させることができない。) |
借り手のメリット | ①農地法の許可が不要。 ②利用権の再設定により、継続して借りられる。 |
●農地利用計画の要件は次のとおりです。
・計画内容・・・市町村の基本構想に適合すること。
・農用地の要件・・・すべての農地を効率的に耕作すること。
・農業従事要件・・・すべての世帯員(法人の役員)が常時従事すること。
常時従事しない者がいる場合
①地域の農業者との適切な役割分担の下に農業経営を行うこと
②法人である場合は、業務執行役員のうち1人以上の者が耕作の事業に常時従事する
こと
その他の権利関係・・・利用権を設定する土地について権利関係者すべての同意を得
ていること(共有のうちである場合は、持分1/2を超える同意があること)
●農地の転用違反に対する処分と処罰について
違反に対する行政処分は、下記の者を対象として行われます。
・違反対象者
・条件付きで許可を受けた者がその条件に違反したとき
・違反した土地について工事を請け負った者またはその下請人
・不正の手段等で許可を受けた者
違反に対する行政処分には、許可の取り消し・条件の変更・新たな条件の付加・工事
の停止・原状回復などがあります。
これらの処分をするための要件は、違反転用事案の内容、聴聞・弁明の機会の不要で
の内容の検討、当該土地の周辺における土地の利用状況、土地の現況、農地以外のも
のになった後の法律関係、当該土地を手に入れた者がその土地が不正の手段で許可を
受けた土地であることを知っていたかどうか、過去に違反転用があったかどうか、是
正勧告を受けてもこれに従わないかどうかを総合的に検討されます。
※聴聞・弁明の機会の付与とは、行政機関が行う不利益処分に先立って、処分の名宛
人に対して行う手続きの一部です。
・行政罰
違反に対する行政罰は、3年以下の懲役または300万円以下の罰金です。行政罰の
対象者は、農地の権利移転・農地転用に違反した者、不正の手段等で許可を得た者で
す。